歯周病は多くの人が罹患しやすい 静かに進行する感染症です。
「細菌」が関与することはどなたもがご存じの事実でしょうが、そこに遺伝的なものも原因する場合もあります。
遺伝子レベルで生まれながら発症のリスクを抱えておられる場合もあり、その研究も今は進んできています。
そしてしっかり歯ブラシすればと理解されがちですが、忘れてはいけないのは 「咬合力 です。
かみ合わせの問題、噛む力の問題は無視できません。
歯はすり減り、ちょっとずつ前に傾き、噛み合わせも生涯少しずつ変わって行きます。
歯周病は 私たちが日常の細菌のコントロールと 力のコントロールを適切に行うことで その一定改善することができます。
悪くなってから歯科医院に飛び込むのではなく、「長期にわたっての口腔衛生管理」
これこそが 歯周病にならない対策、歯周病治療をされた方が再発しないための対策なのです。
治療に関して
歯周病には段階があります。歯周ポケットからの出血の有無、ポケットの深さ、歯のグラグラ感(動揺度)、歯茎の状態、歯を支える骨の状態、噛み合わせ、すでに失った歯があるかどうかなどを調べて判断します。
糖尿病リスク、喫煙の有無、年齢も診断に影響します。
そして 軽症、中程度、重症 と分かれます。それぞれの段階で行うことには違いがあります。
【軽症】では 歯石を除去した上で 徹底的なプラークの除去がメインとなります。この段階でも噛み合わせの調整などは必要に応じて行うことがあります。
生活習慣の見直しも大切になります。
そして 軽症、中程度、重症に関わらず、歯ブラシによるプラークの停滞がない状態(歯ブラシが日常で徹底されてきたかどうか)はその後に大きく影響しますので このプラークコントロールはご自身がしっかりと習得してください。
【中程度】の歯周病では 歯茎より下の隠れている歯根表面に付いた歯石を完全に取り除き、歯根の表面をツルツルに平滑化する必要があります。
歯と歯の間も隙間がありますから 通常の歯ブラシ+歯間ブラシなど その方の状況に応じたブラシを使うことがとても大事になります。
噛み合わせ、歯並びの問題が根本的な解決に結びつく場合は 年齢やリスクも考えた上で、今後のため「矯正」をお勧めすることもあります。
歯並びが整うと 磨きやすくなりますし、噛み合わせによる歯周病リスクも軽減できるからです。
この段階では初期治療後、状態を再評価して もし部分的に問題が残れば歯周外科処置を行うこともありますが、全体的に 歯周ポケットの減少(4mm程度)、ポケットからの出血や歯のグラグラが一定減少すれば このまま維持を目指すことになります。
【重症】の場合は 上記に加え、歯周外科処置が必須になります。骨の失い方によっては 歯周再生治療も行います。その場合 骨の再生を促す薬剤や人工骨を用いることもあります。
歯周再生治療はケースによっては非常に有効です。
歯茎の幅、厚みが足らない場合は歯茎の移植(結合組織移植)も行う必要も出てきます。
そして何本か失った歯がある場合は 噛み合わせの回復が要ります。
インプラントや被せ物で 上下顎の歯の咬合を回復させる治療も多くの場合行うことになります。
ブリッジと入れ歯は残っている歯に頼るため、過度に力の負担をかける ことになります。
その場合インプラント治療の有効性が最も発揮される場合となります。
歯を失った場合の選択肢として 考える必要に迫られることもあります。
インプラントはやはり治療費がかかってくることになります。重症度が増すほど、改善のための時間もコストもかかることになりますので 早め早めの対策が大事ということになります。
このように おひとりおひとり状態は異なるのが歯周病なのです。
これらは精密な検査と診断 治療計画が求められます。
そして歯科衛生士との連携なくして 歯周病の治癒はあり得ません。
最新の歯周病学をよく学んだ歯科衛生士と歯周病治療を担当する歯科医師の情熱、患者さんの治したい意欲と積極的な姿勢が 良い治療結果と長期の安定につながるわけです。
患者さんご自身の日常の努力なくして 歯周病治療の成功はありませんので 力を合わせて 残された人生の大切な毎日を 健康で快適に過ごせるよう 一緒にがんばりましょう!!